エッセイ

スーモの奴隷

今すごく疲弊している。

全てが仕事に奪われている。

 

最近、賃貸仲介営業という仕事を始めた。

疲弊しているのはそのせい。

仕事内容、人間関係(社内、社外)全てにおいてとにかく疲れる。

 

朝9時から仕事が始まり、19時に仕事が終わる。

これはあくまで仕事が終わっていれば帰ってもいい時間。

 

実際は朝8時には出勤し、夜の10時ごろ、おそければ夜中まで働かなければならない。

この長時間労働が続いてしまう理由はいくつかある。

1つは社長自体が仕事人間。

周りの従業員にも長時間労働を求める。

皆が残業体質でそれについて何も疑問を持たない。

もはやマヒしている。

 

賃貸仲介を行う上に置いて最も重要なのが集客だ。

どの商売でもそうだろうが賃貸の場合ここがやっかいである。

客のほとんどは部屋探しをする時、スーモを見る。

営業マンはそのスーモに物件を打ち込みしなければならないのだ。

一日中鳴りやまない電話を取りながら、話の通じない管理会社の人間との電話もして、メール、客との電話、メール。

書類の作成、契約業務。

あまりにも時間がない。

残業しなければ到底おいつかない。

物理的に不可能である。

その中でも朝早く来て、遅くまで残り、物件の打ち込みをする。

多き時で40~50件。

打ち込みできる物件自体も限られており、社内で奪い合いがある。

新人は先輩の食い散らかした物件の残りかす掲載するしかなくなり、探すのもひと手間だ。

大手の不動産管理ならイチイチ電話で掲載確認(スーモに掲載してもいいか)などと聞かなくてもいいが、

クソ物件になるとよくわからない管理会社になるので一軒一軒確認しなければならないのだ。

時間のロスにもなるし、電話にでないのもざらである。

そしてそんなクソ物件にはもちろん問い合わせもこない。

毎日、上司からは打ち込みが少ないと文句を言われ、雑務を全て投げられ疲弊していく。

隣に座っている上司は永遠と面白くない話をしてくるか、よくわからない武勇伝を言っては時間を奪ってくる。

昼頃には疲れ切って愛想笑いすらもできない。

同期の女は気がきかなさすぎて、来客に茶もだせない。

少し後に入った台湾人の女はもっとひどい。

電話にすら出ない。

「だから外国人は嫌なんだよ」と差別的発言をしたくなる。

そもそもだが、電話なんてないのが一番だが、まあ必要ならせめて自動音声にするべきだ。

しかし、そんなことを言っても社長は聞く耳を持たない。

電話のが早いじゃん?と意味のわからない返しをされる始末。

こっちからかけても相手がでるかわからない。電話にでてもお互いその間時間を奪われる。

電話に出なければ、社内で折り返しがきたら教えてくれと伝える。

物件の案内にでているともちろん電話になんかでれない。

違う人間が電話をとる。

その人間の時間が奪われる。

意味がわからない。

しかもすべてがチャットやメールで解決できる問題である。

確かに電話はいいツールだと思う。

今時テレアポをガンガンする企業も減ってきていると思うし、むしろ逆張りでいいのかもしれない。

でも全てで電話をするのは違うのではないか。

重要なときだけでいい。

交渉の時や、何かトラブルがあって誠意をみせないといけない時など。

あくまで緊急の時でいい。

そんな不満を電話がかかってくるたびにプツプツ感じながら過ごしている。

一日はすごく短い。気づけば夕方、深夜。

 

 

スーモに物件を掲載するには金を払う必要がある。

金額により枠数が決まっており、今の店舗では月に200万程支払っている。

それだけ支払っているのだから枠を全て埋めたい。

営業マンは稼ぐために、問い合わせを増やすためにたくさん埋めたい。

不動産業者はスーモがなければやっていけない。

永遠に搾取され続ける。

そこから抜け出そうともしない。

スーモの奴隷だ。

俺たちはスーモの為に、いやリクルートの為に、働いている。

リクルート税を納め、国にも税金を納めている。

まあ俺は直接的に払ってはいないが、間接的に長時間労働により搾取されているので同様だ。

もはやリクルートの社員だ。

 

そんな闇のスーモに掲載された物件に客は問い合わせてくる。

お気に入りの部屋があれば、サイトの下部に記載されている不動産業者に連絡をとり、

私たちにスーモから連絡が入る。

そこには問い合わせ「物件名」、「客の名前」、「メールアドレス」、「電話番号(任意)」があり、

問い合わせから10秒もしないうちに問い合わせ物件の状況を調べる。

内見ができ、募集中の物件があれば最高だ。

しかし、ほとんどの物件はすでに募集が終わっている。

物件の状況がどうだろうと電話番号があればすぐに客に電話をかけ、なければメールをする。

 

そこで正直に「もう申し込みがはいってます」などとは絶対に言わない。

すでにない物件でもとにかく募集中だと嘘をつく。

店に呼ばなければ何も始まらないからだ。

店に呼んで受付をする。

希望の家賃、エリア、入居時期などを聞き、

「お客様にお問い合わせいただいた物件ですが、、、、、」からすべてが始まる。

募集中だが、内見はできない。

募集中だが、内見はできる(実際にはすでに申し込みは入っている)

募集中だが、内見はできない。ただ、他の部屋は内見ができる。

大体がこのパターンだ。

 

この幻の物件を客の候補から消していくためにひたすら貶していく。

立地、値段、管理会社の悪口。。。

とにかく貶して、他の物件を出していく。

客は営業マンの口車に乗せられ、あたかも不動産屋が出してきた物件のほうが魅力的なのではと感じ始める。

信じられないと思うかもしれないが、ほとんどがそうだ。

そして営業マンは売り上げを上げるためにADといわれる広告料が多い物件を客に売りつける。

ADというのは家主からもらえる広告料で主に人気のない物件や閑散期などに多く付けられる。

賃料の1か月分ならAD100、2か月分ならAD200だ。

中にはAD300=家賃の3か月分の広告料がでる物件もあるので、それと仲介手数料もしれっととれれば賃貸とはいえ結構な金額だ。

もちろんそんな広告料を出している物件は基本的に不人気物件で、本当はもっといい物件がたくさんあるにも関わらず、

営業マンはそれを勧める。

 

ただしょうがないとも思う。真面目にいい物件を決めていっても売り上げはなかなか上がらない。

あくせく働いてもせいぜい売上90万~120万とかそのくらいだろう。

ADがついている物件を多く決めれば月の売り上げは400万にもなる。

法律では客と家主からとれる仲介手数料はそれぞれ賃料の0.5か月分とされているが、そんなケースはみたことがない。

 

うまいこと契約が決まると、次は管理会社とのやりとりだ。

Webの仕事していたから余計に感じるのか、この業界は本当に電話が好きだ。

誰これ構わず電話をする。

そこで言った言わない問題ももちろん起きる。

それなのにずっと電話をする。

学ばない。

FAXもバリバリつかっている。

この仕事を始めるまでコピー機でFAXを送れることなんて知らなかった。

それは自分がバカなのもあるだろうが、さすがに効率が悪すぎる。

印鑑もめちゃくちゃ押す。

印鑑は押すものだからもちろん押すのだが。

電子契約という便利なものがあるのにも関わらず、ほとんどの業者では書面でやりとりをする。

もっとひどいのはオンラインで電子契約したのにも関わらず、一部書類は郵送だったことだ。

何がなんだかわからない。

なぜそれを使うのか。何のために存在しているか。

意味が分からない。

謎が多すぎるのだ。

 

仮にこちらがいくら効率化を図ろうとも相手方が電話しかでなければ対応の仕様がない。

なぜだ、なぜなんだ。

 

仕事を始めてから5カ月がたった。

果たして続けられるだろうか。

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