エッセイ

母乳を飲ませてくれと懇願した30歳の夜

ある日、元カノから結婚したと連絡があった。

少し前に流行った曲の歌詞にある

「夜中にぃ~いきなりさぁ、今なにしてるのってらい~ん~♪」

で始まり、二言目が

「夜中にぃ~いきなりさぁ、私、結婚するってのらい~ん~♪」

である。

彼女は元々喫煙者だったので

「いきなりさぁ~、タバコなんか咥えだしてぇ~。」というくだりはないのが残念だ。

 

それでもあの歌詞のとおり、数年ぶりの連絡だった。

喧嘩別れなどではなかったと思うが、彼女となぜ疎遠になったのかもよく覚えていない。

 

 

めでたいことに妊娠もしているようで、純粋にうれしい気持ちになった。

 

 

「なんか寂しいけど、あぁ、なんかよかったなぁ。」

 

 

ふと思った。

 

なぜ彼女は僕にわざわざ連絡してきてくれたのだろうと。

 

 

 

そこではっと気づいた。

 

妊娠しているということは母乳が出るということ。

 

付き合っている当時、彼女は母乳がでないことにすごく悩んでいた。

なぜなら僕が懇願していたからだ。

 

なぜ神は「クリ〇リス」というエンターテイメント要素しかない性器を創ったのにも関わらず、

母乳に関しては、妊娠しないと出ない設計にしたのか。はなはだ疑問だった。

 

その疑問を彼女に投げかけると

「本当だねえ…くそぉ。母乳が出ればもっと楽しそうなのに…」

と言った。

 

あまりにも母乳が出てほしくて、

「母乳がでないおっぱいなんてレーザービームがでない光線銃と同じだ。」と彼女を揶揄したことさえあった。

 

 

しかし、そんな僕に彼女はチャンスを与えてくれたのではないか、と考えた。

「今なら飲ませて揚げれるよ!」と

直接は言わないが、伝えてくれているのではないか、と。

 

 

しかし僕も人間だ。恥じらいがある。

単刀直入に

「母乳飲ませてくれない?」というのもご下劣なので

敢えて
「じゃあ、母乳出るってこと?てかもうすでに出てるってこと?」と遠回しに確認した。

 

飲ませてくれとはいわない。

今は彼女ではないし、あくまでも母乳は赤子のものであり、

僕の私利私欲により、その天の恵みを享受するなんていけないことだとはわかっている。

 

 

私はただ少し…

ほんの少しのスピルドミルクをいいただければ幸せなのだが。

 

 

とりとめもないやりとりを続け、ついに僕が切り出した。

 

「母乳さ、飲ませてくれへん?」

 

そして彼女から運命の返信があった。

 

「んー?だめえ~!!」

 

僕はキレそうだった。

「じゃあなんで連絡してきたんだよ!!!!!!!!!母乳自慢してんじゃねえよ!!!!!!!!!!!出し惜しみすんじゃねえよ…」

と送ってやろうかと思った。

 

衝動をぐっとこらえた。

 

「冗談やんかぁ!」

 

なんともダサい返しをしてしまったのだろうか。

情けない。

 

正直、母乳を哺乳瓶に詰めて(できたら殺菌もしてほしい)着払いでもいいから送ってほしかった。

仮に母乳を送るとなると生もの扱いになるのだろうか。

 

鮮度が落ちると危険!というのであれば、加工してもいいだろう。

チーズにするなり、ヨーグルトにするなり、、、乳の加工品は無限にある。

作るのが手間なら母乳を容器に入れて凍らせるだけでもいい。

なんちゃって母乳プリンの完成だ。

 

そんなに貴重な母乳は送れないとなれば他にも方法がある。

赤子に母乳を与えている際に、ポタポタと母乳が零れ落ちることがあるだろう。

そのスピルドミルクのシミが付いたよだれかけでも構わない。

 

 

 

 

いつか願いが叶うその日まで、僕は絶対にあきらめない。

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