ある日、元カノから結婚したと連絡があった。
少し前に流行った曲の歌詞にある
「夜中にぃ~いきなりさぁ、今なにしてるのってらい~ん~♪」
で始まり、二言目が
「夜中にぃ~いきなりさぁ、私、結婚するってのらい~ん~♪」
である。
彼女は元々喫煙者だったので
「いきなりさぁ~、タバコなんか咥えだしてぇ~。」というくだりはないのが残念だ。
それでもあの歌詞のとおり、数年ぶりの連絡だった。
喧嘩別れなどではなかったと思うが、彼女となぜ疎遠になったのかもよく覚えていない。
めでたいことに妊娠もしているようで、純粋にうれしい気持ちになった。
「なんか寂しいけど、あぁ、なんかよかったなぁ。」
ふと思った。
なぜ彼女は僕にわざわざ連絡してきてくれたのだろうと。
そこではっと気づいた。
妊娠しているということは母乳が出るということ。
付き合っている当時、彼女は母乳がでないことにすごく悩んでいた。
なぜなら僕が懇願していたからだ。
なぜ神は「クリ〇リス」というエンターテイメント要素しかない性器を創ったのにも関わらず、
母乳に関しては、妊娠しないと出ない設計にしたのか。はなはだ疑問だった。
その疑問を彼女に投げかけると
「本当だねえ…くそぉ。母乳が出ればもっと楽しそうなのに…」
と言った。
あまりにも母乳が出てほしくて、
「母乳がでないおっぱいなんてレーザービームがでない光線銃と同じだ。」と彼女を揶揄したことさえあった。
しかし、そんな僕に彼女はチャンスを与えてくれたのではないか、と考えた。
「今なら飲ませて揚げれるよ!」と
直接は言わないが、伝えてくれているのではないか、と。
しかし僕も人間だ。恥じらいがある。
単刀直入に
「母乳飲ませてくれない?」というのもご下劣なので
敢えて
「じゃあ、母乳出るってこと?てかもうすでに出てるってこと?」と遠回しに確認した。
飲ませてくれとはいわない。
今は彼女ではないし、あくまでも母乳は赤子のものであり、
僕の私利私欲により、その天の恵みを享受するなんていけないことだとはわかっている。
私はただ少し…
ほんの少しのスピルドミルクをいいただければ幸せなのだが。
とりとめもないやりとりを続け、ついに僕が切り出した。
「母乳さ、飲ませてくれへん?」
そして彼女から運命の返信があった。
「んー?だめえ~!!」
僕はキレそうだった。
「じゃあなんで連絡してきたんだよ!!!!!!!!!母乳自慢してんじゃねえよ!!!!!!!!!!!出し惜しみすんじゃねえよ…」
と送ってやろうかと思った。
衝動をぐっとこらえた。
「冗談やんかぁ!」
なんともダサい返しをしてしまったのだろうか。
情けない。
正直、母乳を哺乳瓶に詰めて(できたら殺菌もしてほしい)着払いでもいいから送ってほしかった。
仮に母乳を送るとなると生もの扱いになるのだろうか。
鮮度が落ちると危険!というのであれば、加工してもいいだろう。
チーズにするなり、ヨーグルトにするなり、、、乳の加工品は無限にある。
作るのが手間なら母乳を容器に入れて凍らせるだけでもいい。
なんちゃって母乳プリンの完成だ。
そんなに貴重な母乳は送れないとなれば他にも方法がある。
赤子に母乳を与えている際に、ポタポタと母乳が零れ落ちることがあるだろう。
そのスピルドミルクのシミが付いたよだれかけでも構わない。
いつか願いが叶うその日まで、僕は絶対にあきらめない。