エッセイ

ぴえんを追いかける無職男

それは俺が御用達のマイバスケットに行った時のことだ。

店に入った瞬間、違和感を覚えた。

その違和感は鼻から脳へ、そして股間にきた。

このかほり。

麻薬を打った瞬間のようにビビットきた。

寝ぼけていた頭は鮮明になり、おれのマレンキーヘアーが影となって、脳内に旋律が走る。

マイバスケットに大きな鳥が迷い込んできたかと思ったよ。

知ってるんだ。

この匂い。

「ぴえんの匂い。」

ぴえんがグミをあさってるんだ。

そこにいるんだ。

好きなんだ。おれは。。。ぴえんが。。。

「ここのマイバスケット。ピンクのモンスターおいてるんですよ?珍しくないですか?」

「ぴえんがみんなピンモン好きとか思ったら大間違いなんだよ!!!!!おっさん!!!てかこんな昼間になにしてんだよ!!仕事してねえのか?」

「あ、、いえ、、むごむごふぁふぁふぁさささささ…」

だめだ!ずっと家にいるせいで会話のキャッチボールができなくなってる。

「あ?なにいってんだよ!きも!!!!!」

「ふぁしゃしゃしゃしゃ??」

「すみません!店員さん!なんかきもいのがずっと話しかけてくるんですけど!!」

「お客様!!店内でナンパされるのは迷惑になりますので。。。」

「ふぁふぇふぇふぇ_??」

くそ!言葉がでてこねえ!!!

「ありがとうございました~」

うぃーーーーん

ぴえんが店のそとにいっちゃった!!追いかけないと!

すたすたスタスタスタ

俺はぴえんを追いかけながらふと疑問を抱えた。

「そういえば、一体ぴえんはどこからやってきてどこへ行くんだ?」

この疑問、以前にも抱いたことがあった。

公園にいる鳩もそうだ。

夜になるといなくなるけど、一体あいつらはどこに、、、、

確かその答えは聞いたことがあったような気もする。

木の上とかだったような。

だとするとぴえんが帰る場所はまだ誰も特定できていないんじゃないか?

もしかすると、どこかマンホールを開ければそれが地下施設につながっていて、そこで多くのぴえんが生活しているんじゃなかろうか。

水分はエナジードリンクから摂取しているが、食料はどうしてる?

まさか、もうそんな咀嚼というものから解放されているのか。

確かにSNSなどでみかけるピエンは総じて小顔だ。

咀嚼していない。と言われても納得がいく。

おそらく世界中の頭のいい科学者たちは、ほかの案件が忙しすぎてこの問題をまだ解決しようと動いていないだろう。

千載一遇のチャンスだ。

ならばこの俺が1匹のぴえんを追いかけることによって、ぴえんの生態が明らかになる。

無職の俺がそれをきっかけにぴえんの専門家となり、コメンテーターとして情報番組などに呼ばれ、雑誌のちょっとしたエッセイを書く。

もう就職もしなくていいんだ。。。

番組に呼ばれて適当にへらへらして、それっぽいことを言っておけば、

誰も俺がただのぴえんのストーカーだなんて気づくまい。

ショーンKだって途中までうまくやってたじゃないか。

彼は失敗してしまったが、同時に道も開拓した人間だ。

俺自身が道をつくる必要はもうない。

アリバイだけつくればいい。

まってろよ!!ぴえん。

周りをみわたすと50m先にぴえんを発見した。

「まだ間に合う!」

奴らは照りのある厚底のブーツを履いているからして、早くは歩けないはずだ。

「あの照りのブーツもいいんだよなあ。。。」

いかん!!いかん!!わたくしは研究者の身。こんな下心をもってはいかん!

純粋に。澄み切った湖のごとくただ純粋にぴえんの生態を知りたいだけ。

そしてそれを社会に役立てたいだけ。

やましい気はさらさらない。

こんなことを考えている間にぴえんと俺の距離は果てしなく近づいた。

ぴえんまで10メートルもない。

こんなに離れているのにぴえんの香りがこちらまでする。

呼吸をするたびに俺の全細胞が喜んでいる。

ぴえんの香りをかぐために、鼻呼吸を行っている時に

自分が日常でいつも口呼吸をしていることに気が付いた。

「あの!すみません!」

「きゃあ!!!!さっきのおっさん!!!」

「そうじゃないんです!僕はあなたのことが知りたいだけだ!」

エナジードリンクに含まれているカフェインのおかげで俺の呂律は正常となった。

さっきよりも会話ができている。

「申し遅れました。僕の名前は寺沢。全国のぴえんを研究しているものです。」

「は?」

「はたしてぴえんはどこからやってきて、どこへ帰ってゆくのか。

その疑問を解決しようというのです。」

「やべえなお前!」

「折り入ってご相談が。あなたの匂いをクンカクンカしたいのです。」

「死ねええええ!!!!!」

ぐさ!!!

「ぎゃあああああああ!!!!!!!!!」

目が覚めるとそこは家だった。

時計をみる。午前3時だった。

生きててよかったあ。

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