エッセイ

関西人という絶妙な括りに悩んだ30歳【日払い生活】

ブラックなナイトワーク業界を変えたい!!

月給35万!

週休完全2日!

年に四回!社員旅行あり!!

水商売によくあるうたい文句。

かわいいミツバチちゃん(僕)はこんな甘い言葉に釣られ、求人の応募ボタンを押してしまいました。

正直なところ絶対嘘というのはわかっていたのですが、この度家賃更新料が工面できずにいた僕は日払いできるアルバイトを探しておりました。

水商売のメリット。。。それは「日払い」ができる!!

その日暮らし約10年の僕にはそれが一番重要なのです。

 

さっそく求人に応募すると10分後に返信がありまして一番最寄りのガールズバーで面接の約束をとりつけました。

用事がなければ絶対に来ることのなかったであろう駅名。

周りは住宅街で飲み屋なんてものは見当たりません。

その中に燦然と輝くピンク色の看板。

間違いない。これが僕の目指していたオアシス。

ビルの地下一階にそのお店はありました。

 

さっそく中に入ると内装はガールズバーというよりもオシャレなバーのような感じ。

客がちらほら。席数は20といったところか。

なぜ僕がこの席数を気にしているのかというと席数が多ければその分忙しい傾向にあるからである。

もちろん絶対にそうではないのだが、仮に店が忙しくなった際に席数が多いと重労働になってしまうので、

僕はできるだけ席数の少ないこじんまりとしたガールズバーを選びがちなのだ。

満席になっても楽だから。である。

 

まあでも今回に関してはそんな贅沢は言ってられない。

とにかく日払いをしなければまた親にお金を借りなければならないのだ。

今宵30になる奴が家賃の更新料が払えないからと言って親に頼むなんて情けない。。。

年を取るごとにそんな「羞恥心」のようなものもフツフツ湧いてきた自分にジーンとする。

 

店内に入るとすぐにボーイさんが席に案内してくれた。

金髪でガタイのいいお兄さん。

見た目とは裏腹にあまり慣れていない感じだったので新人さんだろうか。。

「少しだけお待ちください。」

阿部寛のような声で諭され、免許証を渡した僕は8オンスに入れられた薄い自家製ウーロン茶を飲みながらその時を待つ。

 

普通面接までの時間というのは緊張するものだが、ガールズバーやキャバクラに至っては慣れたものである。

しかもほぼほぼ落とされることはない。

一度だけ面接に落ちたことがあるが、その時は前店の上司とかなり関係が悪く、近所の店に面接にいったので悪評を流されていたらしい。

一応そのような情報共有をしているらしい。

 

待つこと10分。奥からニコニコして愛想のいいお兄さん(お兄さんといっても30後半~40代くらい)がやってきた。

「よろしくお願いします!」

めちゃくちゃいい感じの人だ。と思ったのと同時に笑っている顔がかなりの作り笑い。

というか作り笑いをしすぎて、作り笑いが本笑いに昇華されそうな表情だった。

しゃべっているうちに

「あれ、君関西人?」

と言われ

「そうなんです!」

「お、俺も関西人やねん!」

という遠い異国の東京で関西人が出会う盛り上がりそうな流れであったが、

奈良県出身(彼)と兵庫県出身(僕)では共通の話題がなさ過ぎて変な空気になってしまった。

「だいぶつ、、、しか、、、、だいぶつ、、、、笑い飯。。。」

奈良県と言えば。というワードで頭の中をフル回転させて出た絞りカスは誰でも思いつきそうなもので、唯一自分の中で話題にできそうな「笑い飯」

というワードで会話を始めるのはあまりにリスキーだ。

やめておこう。。。そう思った。

 

奈良県の人間に初めて会ったが、こんなにコテコテしている関西弁は初めて聞いた。

「関西人だ。」とふと思う。

 

話は進み、僕はめでたく系列店のお店でアルバイトとして勤務することとなった。

時給1200円。上等だ。

しかし気がかりなことが1つあった。

それは来月には社員になることが条件。ということである。

アルバイトで適当に稼いですぐにフェードアウトしようと思っていたので断ろうかとも思ったが、

また面接に行ってしまうと、家賃更新の日に間に合わない可能性が浮上してくるのでとにかくすぐに働きたかった僕はその条件を秒で承諾。

辞める前提ではあったが、今の職場の給与が低いこともあり、

ワンチャンいい職場だったらこのまま社員になってもいいなとも思っていた。

 

次の日早速系列店にお邪魔して初出勤。

以前はレストランで勤務していたという30代くらいの店長さんは気さくな方で安心した。

普段は別の店で店長をされているらしいが、最近人が辞めたのでヘルプで来ているらしかった。

もう一人の従業員は、40代くらいでぽっちゃりメガネでこちらも気さくな方だった。

元々は銀座のクラブでボーイをしていたらしく、店長にちょこちょこ銀座マウントを取っていた。

喋っているうちに斜視になるので、自分に話しかけられているのか、店長に話しかけているのか分からない時が何度かあった。

 

店自体はかなり暇で勤務時間の20時から24時までの間ずっとマンガを読んでいた。

暇なのは嬉しいが、少しだけ退屈だ。

退勤時間になり、僕は食い気味に「日払いをお願いします!」と高らかに叫んだ。

4000円をアマゾンで買った安物のベストについているポケットにそっとしまおうとする。

しかしポケットがただの飾りであることに気づき、スラックスのポケットにしまい込んだ。

 

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